肩の痛みの原因と治療について その① ~肩上部の痛み~
2019年08月21日
こんにちは。かとう鍼灸整骨院上沢院の鍼灸師、池嶋です。
今回お話させて頂くのは「肩の痛み」に関してです。お仕事、スポーツ、そのほか日常生活の様々な状況で肩の痛みでお困りの方は多いのではないでしょうか?
ただし「肩の痛み」といっても、肩そのものの範囲が広く、おおざっぱに言って①肩の先端から首に向かう上部の痛み、②肩甲骨や背中に近い後ろの方の痛み、③胸に近い前の方の痛みの3つがあります。
今回は①の「上部の痛み」に限定してお話ししていきます。
肩上部の痛みはどの筋肉が痛くなっているの?
肩の痛みで困っている方、次のような症状はありませんか?
・「気を付け」の姿勢から腕を横に上げていくと肩に痛みが出る
・「小さく前にならえ」の状態から腕(肘から先)を外へ広げようとすると肩が痛む
肩上部の痛みで上記の症状がある方は、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)という筋肉に問題があります。
なんだか聞きなれない名前の筋肉ですが、腕を動かすにあたって非常に大切です。これらの筋肉が動かなければ「日常生活に必要な動作はほとんど何もできない」と言っても過言ではない程重要な筋肉です。
続いて、どちらの筋肉を痛めているかを判断する方法を紹介します。
肩上部のどの筋肉を痛めているか判断する方法①
◆empty can テスト(エンプティキャンテスト)
「気を付け」の姿勢でまっすぐ立ちます。このとき、手の甲が正面を向いた状態にしておきます。次に手の甲が正面のまま腕を横に上げていきます。
この動作を行うことで肩上部に痛みが出れば、棘上筋の痛みと判断できます。
「エンプティキャン」というのは「空っぽの缶」という意味で、空っぽの缶を手に持ち口を下に向けたまま腕を上げていく動作から名付けられています。
また、本当の「気を付け」の姿勢ように最初に手のひらを太ももにつけ、手の甲が外側を向いた状態で腕を横に上げていった際に痛みが出る場合は、棘上筋ではなく三角筋(さんかくきん)を痛めている可能性が高いです。
ただしこの場合は肩というよりも腕の付け根あたりの痛みになりますので、棘上筋とは区別できます。
肩上部のどの筋肉を痛めているか判断する方法②
◆上腕骨(じょうわんこつ)外旋(がいせん)テスト
「気を付け」の姿勢から肘を直角に曲げ、「小さく前にならえ」の状態にします。
このまま脇から肘までは体にぴったりとくっついた状態で、肘から先を外へ広げていきます。
これを医学的に表現すると「上腕骨(じょうわんこつ)を外旋(がいせん)する」動作なのですが、これがまさに棘下筋のはたらきによるものなのです。
この動作で肩に痛みが出れば、棘下筋を痛めているという事になります。
ではなぜ棘上筋や棘下筋を痛めてしまうのでしょうか?
棘上筋や棘下筋を痛めてしまう主な原因は次の2つです。
①腱板(けんばん)を構成している筋肉の筋力低下
②肩甲胸郭関節(けんこうきょうかくかんせつ)の安定性の低下
順番に説明していきましょう。
棘上筋や棘下筋を痛めてしまう原因①(腱板を構成している筋肉の筋力低下)
肩の関節の大きな特徴は、動かすことのできる角度が非常に大きいことです。
股関節や肩関節では、ある骨の丸い部分が別の骨のへこんだ部分にはまり込むようになっています。股関節ではこの「へこみ」がかなり深く、脚の骨の丸い部分がしっかりとはまり込み強固な関節となっています。
ところが肩関節では「へこみ」が非常に浅くなっており、安定性が少し低い代わりに動ける範囲が非常に大きくなっています。
そしてこの安定性の低下を補うために棘上筋、棘下筋、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)という4つの筋肉で保護しています。
これら4つの筋肉が肩の部分でちょうど服の袖口(カフ)のように関節を取りまいており、これを腱板(けんばん)と呼んでいます。
つまり小円筋や肩甲下筋が弱ってしまうと残りの筋肉の負担が増えてしまい、筋肉が傷ついた結果、痛みが出ることになります。
棘上筋や棘下筋を痛めてしまう原因②(肩甲胸郭関節の安定性の低下)
通常「肩の関節」と言う場合、医学用語で「肩甲上腕関節(けんこうじょうわんかんせつ)」という関節のことを指します。
一方で「肩甲胸郭関節」は簡単に言うと「肩甲骨を背中につなぎとめている部分」のことです。
実際には骨同士が本当に連結しているのではなく、筋肉によってつなぎとめられているだけで、本当の意味での関節ではないため「機能的関節」とも呼ばれます。
肩甲骨は腕にとって土台のようなものであり、腕を動かすにはこの土台がしっかり固定できなければいけません。
この役目をしてくれる筋肉を総称して「IST muscles(アイエスティーマッスル)」と呼び、中でも僧帽筋(そうぼうきん)と菱形筋(りょうけいきん)という筋肉が重要です。
これらの筋肉が弱ってしまうと肩や腕を動かすための筋肉の力を100%発揮することができず、棘上筋や棘下筋に無駄に多くの負荷をかけてしまいます。
この負荷が限界を超えると筋肉が傷つき痛みが出ます。
肩の痛みの治療とケア
肩の痛みでは筋肉が炎症を起こしていることが多いです。
この場合、マッサージのように筋肉を押したりもみほぐしたりする刺激は逆効果です。
患部をしっかりと冷やし、鍼やお灸を用いた治療により素早く炎症を抑えます。
また、この症状では単に痛みを取り除くだけでは不十分で、原因となっている「弱った筋肉」をトレーニングで強化する必要があります。
当院では、誰でもご自宅で簡単にできて効果の高いトレーニングをお伝えしています。私たちが痛みの根本原因を徹底的に取り除きます。
つらい痛みでお困りの方、ぜひ当院のスタッフにご相談ください。
このブログを書いたスタッフ
[はり師・きゅう師]
池嶋 洋介(いけじま ようすけ)
趣味は旅行、音楽ライブなどの楽器の生演奏を聴く事。 水泳・器械体操や格闘技の経験があります。 西洋医学と東洋医学、それぞれの良い所を使って日々施術させて頂いております。